ふと、書類から目を上げて窓のシェードを上げる。
雲海の端に輝く虹のかけらが見えた。
大空を跨ぐ巨大なアーチも美しいが かけらの何とはかない事。
見えることのない美しい全体像を想像していたら
あっという間にとけて消えてしまった。
シェードを下ろすと深く息を吐き、シートを倒す。
その後の記憶が無いと言う事は 程なく眠ってしまった様だ。
気が付くと機内アナウンスがスカルノハッタ空港への
ファイナルアプローチを知らせていた。
再度窓を開ける。
何と分厚い雲の層だろう。
見事に中層を覆い尽くしている。
実に不思議な。見た事のない空である。
やがて降下して雲を抜けた瞬間、謎が解けた。
これがヘイズか・・・。
至る所で赤い光を放つ田畑から白い煙が上り
中層の雲の厚みを補っている。
そんな風景を見てしまったせいだろうか
降り立ったスカルノハッタ空港も何やら煙たい。
車で市内に向かい、チェックインを終えた頃にはすっかり夜になってしまった。
荷を解くとホテルの裏に行き、簡単な夜食にする。
英語は全く通じないが指差し注文でも笑顔で応じてくれる。
国との相性は初日に会った人でかなり決まると思う。
全体をイメージさせるに充分だからだ。
インドネシア。どうやら好きになれそうである。