清純なオサーンの、チンケで退屈極まる旅行記

by wan_chai
 
Sugata(10/19)@BKK
「それで・・・」

老人は柔らかい瞳をまっすぐこちらに向け、静かに言葉を継いだ

「あなたは仏教徒なのかな?それとも神道かね?」

「ご存知とは思いますが、日本において仏教と神道は融和しており
 一般人はそのどちらにも該当しています。」


「よく言われているわね、生きている間は神道で
 死んだ後だけ仏教って」


「!!」

ジョジャのピタリと的を射た口添えに驚く。

「その通りです。ごく一部の信徒を除けば、神道も仏教も同じ様なものです。」

老人の瞳が一瞬だが 鋭く光を放つ
「ふむ・・・。で、死後は神になって天に昇ると。」

「はい・・・。」

「では、君ら日本人は毎日飛行機で神たる自分の祖先を殺戮しているわけだな!

 ワッハッハッハ!


相好を崩した老人は涙を流さんばかりに反り返って大笑いしてみせた。


・・・この爺さん、枯れてない。。
老いて尚、見事な論客ぶりに舌を巻く。


River View Guesthouseという名前ばかりご立派なボロビルは
先ほどのスコールでエントランス周りが完全に水没しており
バイクタクシーを使って入り口に何とか辿り着いた。

エレベーターも壊れている このビルの4階にジョジャとSugataは滞在しているという。

「8階にあるレストランで待っていてね」

とジョジャに言われて、少し息切れしながら辿り着いたレストランは
チャオプラヤとヤワラーの下町を見下ろすロケーションで
河面を渡る風が涼やかな、それは恐ろしいほど気持ちの良い店だった。
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20分程、待っただろうか。
ジョジャを伴って表われたSugataを見て、弾かれたように立ち上がった。
なんと94歳になる老人は4階から軽い足取りでひょこひょこ上がってきたのだった。

「Sugata」

仏教用語で「善逝」、「善く逝けるもの・善く悟りに到達せるもの・浄福を得たもの」
の名を持つこの老人は、第1次大戦前のドイツに生まれ
ナチへの抗議活動からドイツを出奔、インド、ネパールを経て出家したらしい。
帰国後に調べたところ、彼を扱ったホームページが存在したので
historyを読むと詳しい話が出て来た。

請われてタイ、インド各地の寺院でイニシエーションを行う為に回っているらしい。

と言っても、高僧気取りの取り澄ました人間では無く
茶目っ気たっぷりの皮肉屋で、実に人間臭い爺様だった。

冒頭のやり取りの後、
ゲーンペット ガイ(鶏肉の赤カレー)に卵焼きを載せた物を注文した。
ジョジャは肉・蝦抜きのトムカーにライス。
Sugataはチーズバーガー。

え?!

チーズバーガー?!


給仕の女の子が辞した後
「Sugataはベジタリアンじゃないんだねぇ」

「いえ、私と違って彼はベジタリアンよ」

「・・・。」

この後、チーズバーガーとは普通のハンバーガーにチーズを加えた物で
チーズだけが挟んである物ではない事を二人に納得させるのに少々の時間を要した。

そして慌てて厨房に走る。

チーズだけじゃ焼けないというスタッフに、生のバンズにチーズを挟んでケチャップで良いからと
説明をすると、首を傾げながらも了解してくれた。
ドイツ人は元来、夕食に温かい物を食べない習慣だったのでこれでも全く問題無い。筈である。
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果たして出て来た珍妙なチーズサンドはいたくお気に召したらしい。
ビール1杯とともに瞬く間に胃に収めたSugataの
「アイスクリームが食べたい」
という一言を聞いて、再度注文に走った。

結局、彼はかなり大盛りのアイスクリーム(Nestle製)も綺麗に平らげてから
至極 満足げに唸っていた。

今回も頑として支払いを譲らないジョジャに甘えさせて貰い
4階の彼等の部屋へ歩いて移動した。


それはそれは奇妙な経験だった。
窓の外から時折聞こえる京劇の様な音楽、船のエンジン音以外は何の音もしない部屋で
ベッドの上に身を横たえたジョジャに施術する。
その横には静かに座ったSugata。

「強めの方が良い?」

「No pain , no gain」(苦痛無くして進歩無し)

とクスクス笑うジョジャ。
欧米人が好んで使うこの表現を、この後何度も聞くことになろうとは・・・

さて、肝心のマッサージであるが
ジョジャは細かな手技の順序、方法にこだわる為
頻繁に止めては、先生による違いを話し合う事になった。

タイマッサージは、いかにもタイらしく 先生によって全く違う手技になる事が多い。
手順も省く先生がいたり、順序を変えたり

そこにこだわっていると、肝心な所を見失ってしまうのだが・・・
端的に言って、このやり方はとても良かった。
逐一ジョジャのやり方を聞くことで印象付けられて覚えやすかったし
別の手技と論理を聞いたことで、技の引き出しを増やすことが出来た。

1時間半の施術を終えて、ジョジャが聞く

「Sugata、やってみたい?」

「実に興味深かった。でも、ちょっと怖いな」

思わずジョジャと顔を見合わせて笑う。

そこでハッと気付いて時計を見ると24時を過ぎていた。
慌てて挨拶もそこそこに部屋を辞する。

すっかり雨の止んだヤワラーは水も引いて、野犬の遠吠えが遠くから聞こえた。


チャロンクルンで捕まえたタクシーに転がり込んだ時、携帯がSMSの着信を知らせた。
ジョジャからである。

「忘れ物したでしょ^^、明日20時半に出発するからそれまで取りに来てね」

深いため息をついて、背もたれに寄り掛かる。
もう旅立ちか・・・そう言えば彼女に出会ったのは昨日だっけ・・・
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タクシーを降りた所のセブンイレブンで買ったお茶(ぴょりく)はちょっと苦くて・・・すごく甘かった。
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by wan_chai | 2005-11-06 18:20 | タイ
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